あらためて Ricty って何?
Ricty フォントとはプログラミングに合わせて、等幅フォント、アルファベット文字の識別をしやすくするなどのチューニングが行われたフォントです。プログラミング用フォント Ricty
この Ricty フォントの実体は、ラテン文字は Inconsolata という非常に評価の高い欧文フォント、ラテン文字以外は Migu 1M という等幅ゴシックフォントの2つを合成したフォントです。
この Inconsolata と Migu 1M (正確には Migu 1M に合成されている IPAフォント) を合成しているがために、ライセンスの問題から Ricty はフォント自体を配布することができず合成用のスクリプトを提供する方法となっています。
Ricty のフォントの作り方はこちらをご覧ください
プログラミング用フォント Ricty はホントに見やすい
フォントを配布できる Ricty Diminished
Ricty はとても見やすいにもかかわらず、ライセンスの問題でフォントを自分で合成する必要がありました。ソフトウェアに関係ある職業の人にはさほど難しい方法ではありませんが、一般の人にはとても面倒な手順でしょう。今回ご紹介する Ricty Diminished は、ライセンス問題をクリアして Ricty の見やすいフォントを簡単にインストールできるようになったもの、と考えてください。Ricty Diminished は以下から True Type フォントをダウンロードできます。ダウンロードしたファイルは Mac OS であれば Font Book アプリにダウンロードして解凍した TTFファイルをドロップするだけで使えるようになります。
プログラミング用フォント Ricty Diminished
ダウンロードしたファイルを展開すると以下の4つのファイルができます。
- RictyDiminished-Bold.ttf
- RictyDiminished-Regular.ttf
- RictyDiminishedDiscord-Bold.ttf
- RictyDiminishedDiscord-Regular.ttf
これを Font Book アプリにドラッグ&ドロップすれば登録されます。後は使いたいアプリケーションのフォント設定で Ricty Diminished を設定すれば OK です。
簡単ですね。簡単になったのですがデメリットもありますので、その点は注意してください。Ricty Diminished では第二水準漢字の一部と第三、第四水準漢字などが含まれていません。含まれていない漢字を使った場合、アプリケーションによっては別のフォントで表示されたり、表示されなかったりする場合があります。日常的に使われる漢字は網羅されていますが、人名などでは注意が必要かもしれません。
Ricty と Ricty Diminished
Ricty Diminished はなぜ配布できるのでしょうか?その理由の片鱗が配布サイトに記載されています。
Ricty Diminished は Ricty (リクティ) の姉妹フォントであり、Inconsolata と Migu 1M ではなく、Inconsolata と Circle M+ 1m を Ricty Generator で合成したフォントです。IPA ゴシックのグリフを含まないため、使用可能な漢字グリフの数が少ない代わり、SIL Open Font License の下で配布が可能です。
via: プログラミング用フォント Ricty Diminished
http://save.sys.t.u-tokyo.ac.jp/~yusa/fonts/rictydiminished.html
Ricty Diminished の “Diminished” とは「減少した」という意味で、先ほどの引用にあるように「使用可能な漢字グリフの数が少ない」という意味です。先ほどご説明した収録されている漢字が少ないということを表現しているだと思われます。
なぜ、そんなことになるかというと Ricty は足りない文字を IPAフォント で補っていたのをやめたから、ということです。では、なぜやめたのか、というと配布できるライセンスを適用するためだから、ということになると思います。
Ricty が配布できなかった理由とは
以下は私の推測になりますので、その点はご了解ください。
最初にも書きましたが、Ricty は、ラテン文字は Inconsolata という非常に評価の高い欧文フォント、ラテン文字以外は Migu 1M という等幅ゴシックフォントの2つを合成したフォントです。
この Migu 1M というフォントは M+ OUTLINE FONTS を改変したものと IPAフォント を合成しています。その結果、Ricty は以下のフォントの合成ということになります。
- Inconsolata
- M+ OUTLINE FONTS (Migu 1M として提供される改変版)
- IPAフォント (Migu 1M として合成)
Migu 1M がなぜ IPAフォント を合成しているかというと、M+ OUTLINE FONTS は収録されている漢字(正確には字形(グリフ)と言います)が、第一水準漢字と第二水準漢字の一部となっており、足りない部分を IPAフォントに頼っているからです。このあたりに日本語という漢字が多い言語でフォントを提供する苦労が見えます。
では、なぜこのような状態だと配布ができないのか、というと Inconsolata が採用しているライセンス SIL Open Font License (OFL) と IPAフォント が採用している IPAフォントライセンス v1.0 (このページで参照できます: IPAフォントのダウンロード) が両立できないためなのでしょう。
複数のフォントを利用する場合、それぞれのライセンスをすべて満たす必要があるのですが、SIL Open Font License と IPAフォントライセンス の両方を同時に満たすことができないために、フォントファイルを再配布できなかった、と考えられます (Ricty が TTFファイルの配布をやめたのは SIL Open Font License Version 1.1 section 5 に違反する可能性がある、という記述から推測しています)。
Ricty Diminished は Inconsolata と合成する日本語フォントを Migu 1M から Circle M+ 1M に変更しています。(Circle M+ 1M の情報はこちら : M+を元にしたフォント : M+とIPAの合成フォント)。
この Circle M+ 1M は Migu 1M の IPAフォント合成前のフォントのみが含まれています。これを採用することで、 IPAフォントを含まなくなったということになります。IPAフォント が含まれないために IPAフォントライセンス との両立が必要なくなったため配布できるようになった、ということだと思います。
SIL Open Font License も IPAフォントライセンス もどちらも自由に多くのフォントが普及することを目指して作られたライセンスなのだと思いますが、両立性の問題からこのような状況になってしまっているのは残念なことです。特に IPA は情報技術の発展がミッションなのですから、これらの問題が改善するような形にしていって欲しいと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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